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介護事故が起きたときに事業者がとるべき対応

■結果拡大防止に向けた措置

万が一にも利用者の介護事故が発生してしまった場合、いうまでもないことですが、利用者の安全の確保、救命措置、救急や医療機関への連絡、徘徊の場合の捜索など、事業者としては、利用者に更なる大きな被害が発生することを防止するための措置を取ることに全力を注ぐことが重要です。

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■利用者・ご家族への対応

基本原則

万が一にも介護事故が発生してしまった場合、事業者は、法的責任の有無や賠償金の問題のみに結びつけて考えてしまい、利用者やその家族に誠意ある対応や謝罪を行わない事業者も多いところです。

しかし、そのような対応により、紛争を拡大させて裁判沙汰となってしまうことが多々あります。事故直後の連絡、事実の説明や謝罪などの誠意ある対応がなされなかったために、裁判をして徹底的に責任追及をしたというケースは決して少なくありません。反対に誠意ある対応をとり、原因等も分析して十分に説明することで、問題が解決することもあります。

また、利用者・家族の望みが金銭的な賠償ではなく、事実の説明や謝罪、再発防止等のこともよくありますので、利用者らの思いをよく聞くことが肝要です。

事業者の法的な責任の有無という視点で対応をしていくのではなく、以下のとおり、誠意ある態度で対応することが、紛争の拡大を防止するために大切な基本的な姿勢といえます。

 

速やかな連絡

事故が発生してしまった場合には、速やかに利用者の家族に連絡をする必要があります。

連絡が遅かったために、家族等が事業者への不満を募らせ、被害感情を大きくさせてしまいます。また、事故の説明をしても懐疑的で、なかなか信じてくれないということにもなりかねません。

 

原因究明と再発防止策の検討

家族等が事業者に対してまず真っ先に思うことは、事実を知りたい、事故の経緯や原因について十分に説明をしてもらいたいということです。

したがって、事故発生後、できる限り早い段階で事故に関わった職員から事情聴取をしたり、事故の再現を行い、それを記録化するべきです。

また、今後、同様の事故が発生しないための再発防止策も検討しておくべきです。事業者自身のためになるばかりか、利用者・家族は今後の対応についても気に掛けるので、事業者がきちんとした対応をしてくれていると、誠意を感じることができ、問題の解決に近づきます。

具体的には、以下のポイントにしたがって、事案の正確な把握をするべきでしょう。

 

①事故前後の本人の状況を把握し、記録する。

事故以前に本人はどのような利用をしていたのか、家族構成はどうか、いつからどう利用しているのか、後見人はいるのか、どこに住んでいるのか、事故後に本人はどのような状況でどこに居るのかなどを把握してください。また、把握した結果を記録に残すように努めてください。

②時間、場所、態様を把握し、記録する

いつ、どこで、どんなことがあったかを、なるべく正確に把握してください。また、把握した結果を記録に残すように努めてください。場合によっては、事故状況を再現した様子を写真を撮影したり、録画することも有効です。

 

③目撃者や関係者の有無を把握し、記録する

第一発見者は誰か、どのような状況で発見したのか、目撃した職員などはいるのか、などを把握してください。場合によっては、関係者の話を録音・録画することも有効です。

 

④各種書類の整理・把握

当該利用者に関する資料に限らず、介護施設の状況に関する資料などを整理してください。具体的に整理すべき書類の種類については、以下のとおりです。

(1)当該利用者が介護サービス開始時に介護事業者から利用者に交付された書面

介護サービス契約書、重要事項説明書など

(2)当該利用者の介護保険に関する資料

介護保険被保険者証、要介護認定票、介護保険主治医意見書、ケアプラン、更新申請書一式など

(3)介護事業者やケアマネージャーが作成した当該利用者の介護計画に関する資料

個別援助計画書(サービス計画書)、フェースシートや家族からの聞き取り表など

(4)当該利用者の介護の状況に関する資料

モニタリング票(援助計画の実施の状況等の報告書)、業務日誌・介護記録・介護日誌・食事日誌・食事箋などの生活記録、介護スタッフ間の連絡を記録した書面やメール、スタッフ会議の議事録など

(5)当該利用者の医療やリハビリに関する資料

通院先の医師や施設嘱託医の作成したカルテ、レントゲン、処方箋の記録など

(6)介護施設の状況や運営に関する資料

施設構造図、建物の図面、ヒヤリハットシート、当該事故以外の事故に関する利用者及び家族からの苦情内容等の記録、各種マニュアル、人員配置票やシフト票など

(7)事故に関する資料

内部報告書、市区町村への事故報告書、損保会社への事故報告書、当該事故の利用者及び家族からの苦情内容等の記録

 

○謝罪

事業者は、利用者・家族に謝罪をしてしまうと、事故の法的責任を認めたことになり、多額の賠償金を負担に結びついてしまうのではないかと考え、謝罪することに非常に及び腰です。

しかし、道徳倫理的に謝罪はするべきです。それと法的責任を認めることは別の話です。

一言の謝罪がないことが利用者・家族の不満や怒りを大きくさせてしまい、徹底的な裁判闘争に発展してしまうのです。

 

■事故報告

行政機関への報告

介護サービス提供中に介護事故が発生してしまった場合、事業者は、当該施設などを担当する居宅介護支援事業所(ケアマネージャーが居宅介護サービスの計画をしたり、各介護サービス事業者や施設との連絡・調整などを行う、都道府県や指定都市等の指定を受けた事業者)に連絡を行う必要があります。

また、事故の状況や事故についてどのような処置を取ったのかなどを記載した事故報告書を市町村等の保険者に提出する必要もあります。

 

保険会社への報告

さらに、利用者側から賠償請求をされたり、されるおそれがある場合には、事業者が加入している保険会社に早めに報告をしてください。その際、保険限度額(保険会社から支払われる保険金の上限額)、保険会社担当者、今後、保険を使った場合に保険料の値上がりがあるかどうかも、忘れずに確認しておきましょう。



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