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胸腹部臓器の後遺障害

胸腹部臓器の後遺障害

胸腹部臓器の障害は、「呼吸器」「 循環器」「腹部臓器」「泌尿器」「生殖器」の障害に分けられます。

胸腹部臓器の障害の障害等級については、原則として、その障害が単一である場合には臓器ごとに定める基準により判断されます。

また、その障害が複数認められる場合には、併合の方法を用いて相当級が判断されます。

 

<後遺障害別等級表・労働能力喪失表・慰謝料表>

(別表第1)

等級 後遺障害 自賠責保険金額 労働能力喪失率 慰謝料額

:裁判基準

1級2号 2 胸腹部臓器に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 4,000万円 100/100 2,800万円
2 級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 3,000万円 100/100 2,800万円

(別表第2)

等級 後遺障害 自賠責保険金額 労働能力喪失率 慰謝料額

:裁判基準

3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 2,219万円 100/100 1,990万円
5級3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1,574万円 79/100 1,400万円
7級 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1,051万円 56/100 1,000万円
9級 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 616万円 35/100 690万円
11級10号 胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの 331万円 20/100 420万円
13級 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 139万円 9/100 180万円

 

呼吸器の障害について

呼吸器に関連する臓器として、気管、気管支、肺、横隔膜等があります。

呼吸器の障害については、呼吸困難をもたらす呼吸機能を示す検査資料を基本として後遺障害等級が認定されます。原則として、安静時における検査により、動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧を計測し、等級が認定されることになります。

<動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による障害等級 >

動脈血酸素分圧とは動脈血液中にとけ込んでいる酸素の量を分圧(Torr)で表したものです。換気・ガス交換・肺循環・呼吸中枢制御機能という4つの機能の結果として、血液中の酸素を供給できているか否かを示す指標です。

動脈血炭酸ガス分圧は、動脈血液中に取り込まれている炭酸ガスの圧力のことです。

動脈血酸素分圧 動脈血炭酸ガス分圧
限界値範囲内 限界値範囲外
50Torr 以下 1 、 2 または 3 級
50Torr ~ 60Torr 5 級 1 、 2 または 3 級
60Torr ~ 70Torr 9 級 7 級
70Torr 以上 11 級

動脈血酸素分圧が正常(または軽度異常)でも、肺の換気機能の低下によって、安静時などに呼吸困難を示すことがあります。肺の換気機能の障害の有無および程度については、スパイロメトリー検査結果を用います。

 

<スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による後遺障害等級 >

スパイロメトリーとは、スパイロメーターを用いて呼吸気量を計測する検査です。呼吸のときの呼気量と吸気量を測定し、呼吸の能力を調べることをスパイロメトリーといいます。高度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないものです。

中等度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分のぺースでなら1km程度の歩行が可能であるものです。

軽度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないものです。

スパイロメトリーの検査結果 呼吸困難の程度
高度 中等度 軽度
% 1 秒量≦35 又は%肺活量≦40 1 、 2 または 3 級*1 7 級 11 級
35 <% 1 秒量≦ 55 又は 40 <%肺活量≦ 60 7 級 7 級
55 <% 1 秒量≦70 又は 60 <%肺活量≦80 11 級 11 級

動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の組合せや、スパイロメトリー検査では、障害等級に該当しない場合であっても、呼吸機能の低下による呼吸困難が認められ、運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能に障害があると認められるものは、第11級10号が認定されます。

 

循環器の障害について

循環器としては、心臓、心膜、大動脈等があります。

心機能が低下したものについては、運動耐容能の低下の程度により認定されます。

運動耐容能については、安静座位の酸素摂取量を示すMETs (メッツ)単位を参考とします。

7 級5号 除細動器を植え込んだもの
9 級11号 心臓機能が低下による動耐容能の低下が中等度であるもの(*1)

ペースメーカを植え込んだもの

房室弁または大動脈弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行うもの

11 級10号 心臓機能が低下による動耐容能の低下が軽度であるもの(*2)

房室弁または大動脈弁を置換したもの(上記の9 級11号に該当しないもの)

大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの

(*1):おおむね 6METs を超える強度の身体活動が制限されたもの。例えば、平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上がるという身体活動が制限されるもの。

(*2):おおむね 8METs を超える強度の身体活動が制限されるもの。例えば、平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上がるという身体活動に支障がないものの、それ以上激しいか、急激な身体活動が制限されるもの。

 

腹部臓器の障害について

腹部臓器としては、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆のう、すい臓、ひ臓、腹壁等があります。

食道の障害

食道は、咽頭下端と胃の噴門部との間にある長さ鋭24~25cmの管であり、食物を咽頭から胃に運搬する線機能を有します。

9 級11号 食道の狭窄による通過障害を残すもの、

食道の狭さくによる通過障害を残すものとは、通総過障害の自覚症状があり、消化管造影検査により食器道の狭さくによる造影剤のうっ滞が認められるものです。

 

胃の障害

胃の障害は、胃の切除により生じる「消化吸収障害」、「ダンピング症候群」、「胃切除後逆流性食道炎の症状」の有無により等級が定められています。

障害等級 消化吸収障害(*1) ダンピング症候群 (*2) 胃切除後逆流性食道炎 (*3)
7 級
9 級 ×
×
11 級 × ×
× ×
× ×
13 級 × × ×

(*1):胃を全摘した場合には、胃酸などの欠知や不足が生じます。また、噴門や幽門の機能が亡失した場合には、食べ物が未消化のまま腸管に移動することになります。そこで、胃の全部を亡失した場合、もしくは噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失し低体重等が認められる場合は、消化吸収障害が認められるものとされます。

(*2):胃切除を受けた患者の食後に起こる心窩部膨満感・圧迫感・悪心・嘔吐、脱力感、頭重、めまい、発汗、心悸亢進のような症状です。

 

小腸の障害

小腸を大量に切除したもの

小腸を大量切除した場合は、消化吸収機能障害生じることになります。

原則として残存する空腸及び回腸の長さにより後遺障害等級が認定されます。

9 級11号 残存する空腸および回腸の長さが 100 ㎝以下となったもの
11 級10号 残存する空腸および回腸の長さが 100 ㎝を超え 300 ㎝未満となったもので消化吸収障害が認められるもの

 

人工肛門を造設したもの

人工肛門を造設した場合には、排便機能が喪失されるとともに、人工肛門が造設された部位以降の便から栄養や水分の吸収が障害されることになります。

5 級 小腸の内容が漏出することにより、人工肛門の排泄口、ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、便を貯める袋、パウチの装着ができないもの
7 級 人工肛門を造設したもの

 

小腸皮膚痩を残すもの

小腸皮膚痩は、小腸内容が皮膚に関口した痩孔から出てくる病態です。

痩孔から漏出する小腸内容の量に応じて後遺障害等級を認定することになります。

5 級3号 瘻孔から小腸の内容の全部または大部分が漏出するもので、パウチによる維持管理が困難なもの
7 級5号 瘻孔から小腸の内容の全部または大部分が漏出するもの

瘻孔から漏出する小腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上であってパウチ等による維持管理が困難なもの

9 級11号 瘻孔から漏出する小腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上のもの
11 級10号 瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸の内容が漏出する程度のもの

 

小腸の狭窄を残すもの

小腸の狭さくが残存し、1ヶ月に1回程度、腹痛、腹部膨満感、嘔気、嘔吐などの症状が認められ、単純エックス線像において、ケルタリングひだ像(多数の輪状ひだ)が認められる場合に、等級認定の対象とされます。

11 級10号

小腸の狭窄を残すもの

 

大腸の障害

大腸の基本的機能は、水分の吸収と排便です。盲腸及び結腸を亡失すると軽度の下痢を起こし、直腸を障害されると排便障害が生じます。

大腸を大量に切除したもの

11 級10号 結腸の全てを切除する等、大腸の殆どを切除したもの

大腸を切除したことで、人工紅門を造設した場合、人工肛門を造設したものとして等級認定されます。

人口肛門を造設したもの

5 級 大腸の内容が漏出することにより、人工肛門の排泄口、ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、便を貯める袋、パウチの装着ができないもの
7 級 人工肛門を造設したもの

 

大腸皮膚痩を残すもの

大腸皮膚痩は、大腸内容が皮膚に開口した痩孔から出てくる病態で、自然肛門からの随意的な排便機能が障害された状態です。

5 級3号 瘻孔から大腸の内容の全部または大部分が漏出するもので、パウチによる維持管理が困難なもの
7 級5号 瘻孔から大腸の内容の全部または大部分が漏出するもの

瘻孔から漏出する大腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上であってパウチ等による維持管理が困難なもの

9 級11号 瘻孔から漏出する大腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上のもの
11 級10号 瘻孔から少量ではあるが明らかに大腸の内容が漏出する程度のもの

 

大腸の狭窄を残すもの

11 級10号

大腸の狭窄を残すもの

 

便秘を残すもの

便秘とは、便が大腸内に長時間にわたって滞留し、排便が順調に行われていない状態をいいます。高度の便秘になると、自然の排便ができなくなることもあります。

9 級11号 用手摘便を要するもの
11 級10号 便秘を残すもの(上記以外のもの)

 

便失禁を残すもの

7級5号 完全便失禁を残すもの
9級11号 常時おむつの装着が必要なもの
11 級10号 常時おむつの装着は必要ないものの、明らかに便失禁があると認められるもの

 

肝臓の障害

肝硬変と慢性肝炎について定められています。

9級11号 ウィルスの持続感染が認められ、かつ GOT ・ GPT が持続的に低値を示す肝硬変の場合
11級10号 ウィルスの持続感染が認められ、かつ GOT ・ GPT が持続的に低値を示す慢性肝炎の場合

 

胆のうの障害

13 級11号 胆嚢を失ったもの、

 

すい臓の障害

すい臓の障害は、外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の有無により、後遺障害等級を認定することが基本となります。

 

ひ臓の障害

13 級11号 脾臓を亡失したもの、

 

泌尿器の障害について

泌尿器としては、じん臓、尿管、勝脱、尿道等があります。

腎臓の障害

GFR の値 31 ~ 50ml/ 分 51 ~ 70ml/ 分 71 ~ 90ml/ 分 91ml/ 分
腎臓を亡失 7 級 9 級 11 級 13 級
腎臓を失っていない 9 級 11 級 13 級

 

非尿禁制型尿路変向術を行ったもの

5級3号 非尿禁制型尿路変向術を行ったが、尿が漏出しストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないもの
7級5号 非尿禁制型尿路変向術を行ったもの

禁制型尿リザボアの手術を行ったもの

9級11号 尿禁制型尿路変向術を行ったもの(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除く)
11 級10号 外尿道口形成術を行ったもの

尿道カテーテルを留置したもの

 

排尿障害を残すもの

9 級11号 残尿が 100ml 以上のもの
11 級10号 残尿が 50 ~ 100ml 未満であるもの

尿道狭窄のため、糸状プジーを必要とするもの

14 級 尿道狭窄のため、糸状プジー第 20 番が辛うじて通り、時々拡張術を行う必要のあるもの

 

頻尿を残すもの

11 級10号 頻尿を残すもの

 

尿失禁を残すもの

7 級5号 持続性尿失禁を残すもの

切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換するもの

9 級11号 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、常時パッド等を装着しているが、パッドの交換を要しないもの
11 級10号 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、パッドの装着は要しないが下着が少し濡れるもの

 

生殖器の障害について

7 級13号 生殖機能を完全に喪失したもの

(常態として精子が全く形成されず、精液中に精子が存在しない場合も7級相当)

9 級16号 陰茎の大部分を欠損したもの

勃起障害を残すもの

射精障害を残すもの

膣口狭さくを残すもの(陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの)

両側の卵管に閉塞もしくは癒着を残すもの、頚管に閉塞を残すもの、または子宮を失ったもの

11級相当 狭骨盤または比較的狭骨盤
13級相当 1個のこう丸を失ったもの

 

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