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事業者の介護事故予防策・リスク回避

リスクマネジメント体制の整備

言うまでもないことですが、事業者は、事故の予防のため、マニュアルや報告書などを作成して、組織的な管理体制を整備しておく必要があります。これにより、事故の発生を防止し、万が一のときにも大きな事故に発展しないような対応をとることができます。

事業者のための知識はこちら

 

介護事故予防・対応マニュアル

介護事故が発生しないような介護がどの職員もできるように、どのように介護を行うべきかの基本的なことを記載したマニュアルを作成しておく必要があります。

また、問題や事故の発生時において、適切な対応が可能なように事故対応についてのマニュアルも作成しておく必要があります。

作成に際しては、抽象的になりすぎないよう、できる限り事故類型毎に作成しておくことが望ましいといえます。

 

ヒヤリハット報告書

事故予防のために作成している事業者の方が多いといえますが、幸いにして事故には至らなかったものの、その危険性があった際には、その報告書を作成しておくべきです。そして、職員間で共有・蓄積していくことで、自分が気付いていなかった注意するべきことに気付いたりし、事故の発生の予防に繋がります。

職員は報告することをためらう場合がありますが、事業者としては、職員が積極的に報告するように、それを奨励する態度を示し、そのような組織作りに努めるべきです。

 

利用者の状態の聴取

また、そもそも、個々の利用者の状態に応じた適切な介護サービスがありますので、利用者や家族から、介護サービスの利用契約を行うにあたり、十二分に利用者の状態を聞き取り、適切な介護ができるよう職員で共有しておかなければなりません。

 

研修会

介護事故を予防するための研修会などは多く開かれていますので、定期的に研修会に参加したり勉強会を開催したりすることも職員の介護技術等の向上につながりますので行うべきです。

 

事故類型毎のリスクマネジメント

多くの事業者において当然に対応されていることではありますが、よく発生する事故類型毎の対応策を述べておきます。

これらは基本的な対応であり、これらが出来ていない場合に事故が発生してしまった場合、事業者に過失があったとされることになりかねません。

また、防止策に関して、家族とも十分な情報交換や協議を行うことが、事故の予防のみならず、万が一の場合の紛争予防にもつながります。

 

転倒事故

・転倒可能性のある段差を解消したり、床が滑らないようにしたりするなど、施設の構造整備や、車いすの点検などの整備を徹底する。

・利用者に挙動傾向がある場合や浴室等転倒の危険性が高い場合は、見守りを十分に行い、見守りをしていた職員が一時的にでも離れる場合は他の職員に声かけ・代わりを求める。

・送迎等に際しては、外出先の場所の状況を把握しておくほか、見守り不足が発生しないような職員の配置を行う。

・ベッド柵の取付や交換、ベッドから布団への変更、転落時の衝撃緩和のために緩衝材を敷いたり、ヘッドギアを付ける。

転倒事故に関する裁判はこちら

 

誤嚥事故

・利用者の嚥下能力をきちんと把握して、その能力に合わせた食べ物を提供する。

・嚥下障害の利用者のみならず、誤嚥しやすい食べ物は与えない(こんにゃく、はんぺん、かまぼこなど)。

・食事の介助の際は、利用者が食べ物を飲み込んだかきちんと確認の上で、次の物を与えることを徹底する。

・誤嚥の兆候を見逃さないように見守りを行うほか、他の職員も見逃すことがないように記録するなどして共有する。

・誤嚥防止した介助の方法や、万が一にも誤嚥した場合の対応の研修のほか、救命措置が取れる器具の配備などの準備を行う。

誤嚥事故に関する裁判例はこちら

 

介護事故に備えた保険

万が一にも介護事故が発生してしまった場合、利用者やその家族に大きな賠償金の支払いが必要な場合があります。また、利用者やその家族に対する誠意として、法的な賠償責任とは別に見舞金等の趣旨で金員を支払うことが被害感情を和らげる一助になることもあると思います。

 

事業者賠償責任保険

介護事故によって、事業者が利用者など第三者に対する法的な賠償責任を負担する場合において、その賠償金などについて、契約した上限額の範囲内で保険金が支払われるものです。

公的介護保険の指定事業者は、賠償資力の確保や、速やかな賠償金の支払いを義務づけられており、賠償責任保険への加入をしていることが大半です

なお、交通事故の場合における自動車保険のように、保険会社が利用者等と直接、賠償金の交渉を行う示談代行は付いていませんので、事業者は利用者側と直接の協議をする必要があります。

 

傷害保険

事業者賠償責任保険とは異なり、支払われる保険金額の上限は低く少額となりますが、事業者側の法的な賠償責任の有無にかかわらず、利用者が介護事故により負傷して入通院したり、不幸にも死亡したりしてしまった場合に保険金が支払われます。

事業者側の法的な賠償責任の有無にかかわらず支払われるので、利用者側の被害者感情を和らげ、紛争の拡大を防止して解決したりもしますので、契約しておくにこしたことはありません。



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