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ベッドからの転落事故

介護事故でも多いベッドからの転落事故について

介護事故の中でも、ベッドからの転落事故は、類型的に多く生じている事故類型といえます。

そして、高齢者がベッドから転落した場合、傷害や死亡の結果が発生することが多いことから、その責任を巡って裁判へと発展することが多いです。

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主な争点は転倒防止措置がとられていたか

ベッドによる転落事故の場合、被害者が就寝中に発生することが多く、この場合介護職員が常に被害者の状況を監督することは事実上困難です。そのため、訴訟における主な争点は、転落防止措置(安全配慮義務の実施)を十分に実施したか、という点になります。

事業者の責任を肯定する裁判例(大阪地判平成19年11月7日)

被告の運営する痴呆対応型共同生活介護施設に入居していた原告(事故当時86歳)が、入居中に自ら持ち込んだベッドから転落して負傷したとして、被告に対し、債務不履行等に基づく損害賠償等を求めた事案

裁判所は、本件痴呆対応型共同生活介護利用契約の規定からすれば、被告は介護事業者として、利用者の生命、身体に危険の及ばないように、事故防止のために必要な措置を尽くすべき安全配慮義務を負っているところ、原告がベッドから転落する事故を起こした以後、被告が転落防止措置を採った形跡がうかがえないなどの本件事情の下では、被告は安全配慮義務等を履行していなかったと評せざるを得ないとして、被告の債務不履行責任を認めました。

事業者の責任を否定する裁判例(東京地判平成23年6月14日)

要介護認定者である原告(事故当時97歳)が、被告との間で短期入所生活介護に関する契約を締結し、被告の施設に入所して介護を受けていた際にベッドから転倒して頭部を受傷したため、本件事故は被告の安全配慮義務違反又は不法行為に当たるとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案

裁判所は、被告は、本件介護契約の付随的義務として、原告に対し、その生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を信義則上負担していると解されるところ、被告が、本件施設の職員体制及び設備を前提として、他の利用者への対応も必要な中で、原告の転倒可能性を踏まえて負傷を防ぐために配慮し、これを防ぐための措置をとったといえることなどからすると、被告には安全配慮義務違反又は不法行為上の故意過失があると認めるに足りる証拠はないとして、請求を棄却しました。

ベッドからの転倒事故に関する事業者の転倒防止措置についての総括

上記の裁判例からわかるように、利用者が実際に転落したり、転落しそうになるなど、現実的かつ具体的に転落の危険が生じている場合、そのことから、転落防止対策の義務が事業者に肯定されることになります。また、大阪地裁平成19年11月7日の裁判例からもわかるとおり、ベッドが利用者の持ち込みによるものでも結論に影響はないことから、事業者としては、転落防止のための措置を事前に講じることが重要であるといえます。

そこで、転落の可能性がある利用者に対して、事業者は、①ベッド柵の取り付け、②転落をしにくいベッドへの交換、③転落の危険が高ければベッドから布団への変更、④転落時の受傷を最小限に抑えるため、ベッド下に緩衝材を敷いたり、ヘッドギアを付けさせる、⑤転落したり起床して徘徊したらすぐに気づくように離床センサーをつける、等の対策をとるべきでしょう。

また、これらの対策を事前に講じるためにも、利用者が施設の利用を開始するにあたって、事業者はあらかじめ利用者やその家族から聞き取りをするなどして、転倒の危険を基礎づける事実の有無を確認すべきといえます。

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