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介護事故の過失割合

過失割合

注意義務違反(過失)の内容

介護事故が発生した場合、事業者側に安全配慮義務(注意義務)違反(過失)があったかが問題となります。何を持って注意義務違反の有無を判断するのでしょうか。

この点、交通事故の場合などとは異なり、介護事故における事業者の注意義務の内容は明確に類型化されておらず、どのような注意義務があったかをまずは具体的に特定・設定する必要があります。

具体的な注意義務を考えるに際しては、介護サービス利用契約書の内容や、施設に対する人員・設備・運営に関する基準などの法令や通達などのほか、場合により社会福祉士や介護福祉士などの助言も参考にします。

そして、その注意義務に違反したというためには、発生した介護事故を予見することが可能であり、予見するべきであったといえ、その事故の発生を回避するための適切な措置を講じることやそれによる事故の発生を回避することが可能であったにもかかわらず、適切な措置が講じられなかったという必要があります。その判断基準は、当該業務に従事する平均人を基準とします(一般の人より高度の注意義務が求められることになります)。

 

予見可能性・予見義務

予見可能性・予見義務の有無や程度は、主に、①利用者の年齢、②利用者の要介護度、身体動作の能力、③利用者が疾患を抱えている場合にはその状態、④利用者の経歴や普段の行動、⑤それらについて与えられた情報、⑥実際の事故の状況などから、事業者が事故発生する可能性があることを認識していたか否か、認識できたとしてどの程度認識できたか、認識できなかったとすればその理由は何か、という点を考慮して、判断されることになります。

そして、介護記録やサービス計画書の内容、家族からの聞き取り表の内容などは、これらの要素を検討するにあたって極めて重要視されます。

詳しくは、「転倒事故で過失の有無が問題になった裁判例」、「誤嚥事故で過失の有無が問題となった裁判例」や「その他事故で過失の有無が問題となった裁判例」をご参照ください。

 

結果回避可能性・回避義務

結果回避可能性・回避義務の有無を判断するに際しては、利用者の要介護度や疾患等のほか、関与した職員の資格・経験などにより判断されることになります。課される回避義務の内容も異なるといえ、これらが考慮要素になると考えられます。

但し、転倒・転落事故や誤嚥事故の裁判例において、結果回避可能性・回避義務を否定したものはほぼありません。

 

過失相殺

事業者側に注意義務違反(過失)が認められた場合であっても、被害者自身や家族等付添人において、重大な落ち度や不注意がある場合とされる場合、損害額が減額されることになります。これを過失相殺といいます。

この過失相殺については、決まった基準は全くありませんので、裁判所がケースに応じて判断することになります。ただし、認知症などにより周囲の状況を判断できなくなった利用者が誤飲をしたり、職員が車いすを押していたときに転倒するなど、利用者側の落ち度を問えないケースでは、過失相殺をされることはほとんどありません。

他方で、認知症などでもないのに職員の指示に従わずに歩き回って転倒したケースなど、利用者にも一定の落ち度があれば、過失相殺を認めることもあります。

 

まとめ

以上の通り、事業者側の過失の有無や利用者側の過失の有無やその程度の判断は、様々な事情を総合的に考慮して、ケースバイケースで判断されます。また、介護事故の場合、裁判所でも確立した基準が設けられているわけではありません。そのため、過失の有無や程度について判断に迷ったら、弁護士に相談することをお勧めします。



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